心の問題が解決を難しくしていることも

Aさんは、父親がなくなり相続財産の分配の話をしなければならなくなりました。
遺産は預金だけで、相続人は兄弟の２人のみ。
兄から預金を半々で分けることを提案されていますが、Aさんはどうしてもそれに納得がいきません。
Aさんは、生前の父親から「長男（兄）には財産をあげたくない、お前に全てあげたい」と言われていました。
しかし、父親は、特に遺言を遺していることもなく、亡くなっており、兄は、そのような話があったとは聞いていないと主張しています。

Aさんは、法律度相談を受け、法的な判断としては、遺言がなく、兄に譲る気持ちがない以上、遺産は半々で分けるしかないのではないかとの回答をもらいまが、理解はするものの、やはり、納得するまでに至りません。
結局、兄と言い争いに発展、直接話すことができない状態となり、弁護士を通じて話し合いをすることになりました。
結局、遺産は、半々で分配することになり、弁護士を頼むことにより経費が余計にかかっただけでなく、兄との関係が不仲になったことが人生の大きなマイナスとなってしまいました。

弟さんが半々で分けるほかにないとの法律相談の結果を納得できなかったのは、感情が邪魔をしたからです。
感情がうまく処理され、冷静な判断能力を取り戻してさえいれば、特に弁護士を入れることもなく、解決ができていたものと考えられます。このように、遺産分割という法律問題なのですが、問題の根は、感情にあり、それが解決を難しくしているということがよくあるのです。

心の話をすること

まず、心の問題は、解決が可能であることを知ることが大切です。
体の傷が自然治癒力で癒えていくように、心にも自然治癒力があります。
そして、心の自然治癒を高める方法が人と心の話をすることなのです。
心の話をすると、自分の気持ちやストレスに気づき、心が整理され、嫌な感情が処理されていきます。

心の話をすることは、とても難しい

あなたは、最近、誰かに心の話をしましたか？
残念ながら、個人的な心や感情の話をする相手というのは、家族や友人のごく一部の親しい人に限られておられる方が大半なのではないでしょうか。ごく親しい人でも自分の心の問題を話すことは、何か気兼ねをして、そうそう話はされないのではないかと思います。感情的な話は、「愚痴を言って」と煙たがられるイメージもあり、敢えて控えておられる方も多いのではないでしょうか。ご相談にこられた方にとって、私は、初めて会い、法律相談にのってくれる相手にすぎませんので、私が「心の話をしましょう」と言っても、それは難しいことだと思います。
「法律相談に来ているのだから、法律問題以外のことは、話してはいけない。」
「時間で費用が決まるので、個人的な心のことを話すのは、費用の無駄になる。」
そう思って、敢えて心の話をしない選択をされている方も多いのではないでしょうか。

それでも心の話をしましょう

私の事務所にご相談いただいた方に正しい「解決」をしていただきたいと考えています。
正しい解決とは、トラブルに陥ったとしても、人生へのダメージを最小限にとどめ、将来のプラスになっていく解決のことです。その鍵を握るのが「心の話をすること」であると私は考えています。トラブルの解決までの道は、解決の方向性、解決の手段、どこでトラブルに終止符を打つか等々、選択の連続であり、選択するのはご自身の判断です。

例えでお話したように、心の問題があると、正しい判断ができなくなり、その判断を誤る結果となってしまいます。心の話をすることで、まず心の問題を解決すること。それが、トラブルの正しい解決につながるのです。法律相談で、初めて会った私に対し、心の話をすることは、とても難しいことだと思いますが、難しいゆえに敢えて意識的に行う必要があると私は考えています。

デリケートなことですので、私から相談者の心の問題に触れることは基本的にいたしません。ただ、お話いただければ、しっかりお聞きし、できる限り解決のお手伝いをしたいと考えております。是非、勇気を出して、心のお話も聞かせていただけたらと思います。