相続

要介護・認知症の対策

要介護・認知症になるとこのような問題が起こります。

1 お金の管理の問題

多くの方は80歳を超えると、数字の計算が難しくなっていきます。また、お金の出入りを記憶することが難しくなります。

そして、要介護・認知症になると、お金の管理を自分で行うことが困難になっていきます。さらには、入院や施設入所になると、通帳やお金を全て持っていくことはできません。

いずれは、お金を誰かに管理管理してもらうことが必要になるのです。

お世話をしてくれる子供がいる場合は、その方に頼めば良いのですが、お子様がいない場合、誰に頼むのか、そもそも頼む人がいるのか、その人を信用してお金を預けることができるかが問題となります。

頼む方がいたとしても、単にお願いしただけでは、銀行も病院も施設もその方を本人の財産を管理する人として扱いません。頼まれた方は、お世話をしたくても、することができないのです。

2 家族の不仲

要介護・認知症になると、多くのことを子供又はその他の家族に頼らざるを得ません。

子供にも自分の生活があり、親の全ての希望をかなえることができませんので、それが親子の不仲の原因となります。

また、子供同士も実際にお世話をしている子供としていない子では、認識に大きな違いがあり、両親のお金の管理方法、病気の治療方法、施設入所するか否か等で喧嘩になることが多いのです。

3 相続争い

子供の一人が高齢になった両親のお金を預かっている場合、その子供が無駄遣いしているのではないか、自分の財布に入れているのではないかと他の子供に疑われ、それが相続争いの原因となります。

また、両親の世話をしていた子供は、お世話をした子供も全くしなかった子供も平等に扱うことになる法定相続では、不平等に感じます。

そして、遺言等の相続対策は、認知症になるとできなくなります。

要介護・認知症の問題を解決する手段が次の5つの手続きです。

お金の管理の問題

①財産管理委任契約
②任意後見契約
③死後事務委任契約

相続争いの対策

④遺言書

お金の管理の問題・相続争いの対策

⑤家族信託

各手続きのご説明

①財産管理委任契約とは

財産の管理を依頼する契約です。

依頼された人(財産管理人)は、本人の代理人として、預金の出し入れをしたり、各種手続きを行います。

あくまで、ご本人が判断能力を有していることを前提としており、依頼された方は、本人の指示のもと、財産の管理を行い、その管理状況を本人に定期的に報告することになります。

財産管理委任契約を行うことにより、財産管理を行う人に、その権限を与えることができますし、財産管理人は、本人の代理人として、預金の出し入れや各種契約をすることができることになります。

また、財産管理人金銭帳簿の作成、預かり証の作成、報告等の義務が課されるため、安心して財産を管理を任せることができます。

②任意後見契約

本人の判断能力が低下した場合に本人に代わって財産管理を行う者を後見人と言います。

後見人は、裁判所に後見開始の申し立てを行い、裁判所が後見人を選任しますが、本人が先に後見人になる人を選んでおくことができます。

それを任意後見契約と言います。

任意後見契約で後見人に選ばれた方は、本人の判断能力が低下した場合には、家庭裁判所に後見監督人の選任申し立てを行い、後見人になることになります。

後見人は、裁判所が選任した後見監督人に定期的に財産管理の状況を報告しなければならないとされているため、後見人の財産の安全が確保されます。

③死後事務委任契約

ご本人が他界した後、葬儀や埋葬、保険や年金の手続き等、他界により行う必要がある手続きを誰かに依頼をし、代行してもらう契約を死後事務委任契約と言います。

財産管理人や後見人は、本人が他界すると、権限がなくなりますので、死後事務委任契約をすることにより、誰かに他界後の手続きの権限を与えておくことができます。

④家族信託

財産を親族等に預けて、その方に預けた財産の管理をお願いします。

一般に財産管理契約や後見の契約を行っておけば、それで足りることが多いのですが、依頼した人に不動産を売却してもらいたい場合、収益不動産の管理等高度な判断を要することを依頼をする場合や将来の相続を含めた財産の行末を事前に決定したい場合など有用な場合もあります。

⑤遺言書

遺言書は、本人の他界後に誰がどの財産をどのように相続するのかを生前に決定しておくための書類です。

それで相続人通しで遺産を分ける話し合い(遺産分割協議)をする必要がなくなります。

生前に本人の財産の管理やお世話をした方に相続権がない場合でも、その方に遺産を分けることができるようになります(遺贈と言います)。

遺言書で遺産を巡る全ての争いをなくすことができるわけではないですが、遺言の内容を工夫することにより、かなり有効な相続対策となります。

対策さえしておけば・・・。無用な家族の崩壊を防ぎたい。

当事務所は、高齢の方の財産管理や相続に関する多くのご相談を受け、それと向き合ってきました。

ご相談の多くは、既に家族間の紛争にまで発展し、当事者は、とても疲弊しています。

「事前にご相談いただき、対策をとっていれば、このようなことにならなかったのでは」と思わずにはいられません。

人は、例外なく、歳をとりますし、それに伴い心身は衰えます。

それに伴い、「今まで当たり前にできていたこと」ができなくなっていきます。

そうなると「今まで」とは状況が一変し、今までに発生しなかった多くの問題が発生することになるのです。

その問題の多くは、事前の対策で発生を防げることができます。

人生100年時代といわれる昨今、要介護・認知症対策は、全ての方に必須です。

私は、家族崩壊の惨劇を生まないよう、要介護・認知症対策の必要性を訴え続け、一人でも多くの人に対策をとってもらうことをライフワークとして取り組んでいきたいと思っています。

(桜丘総合事務所 司法書士 神田典明)

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