2018/08/28
後見人
資産の凍結はなぜ起こるのか。
2030年には、資産の凍結がGDP(国内総生産)の4割を超える予想が出て、話題になっていますね。
そもそも、資産の凍結とは、高齢の方の財産が認知症やその他の病気で利用することができなくなった状態を言います。
預金を下ろしたり、不動産を売却したり、そういった手続きは、全て本人が自己の判断に基づいて意思表示を行わなければ、できません。
認知症やその他の病気で判断能力を失うと、資産が一切動かせなくなるので、あたかも凍り付いてしまっているようになるわけです。
凍結してしまうと、その方自身の生活費も出せなくなりますし、その方の財産に依存している家族も生活していけなくなります。
そこで、そういう場合の救済制度として、後見の制度(成年後見制度)があります。
本人が判断能力を落ちた場合には、家庭裁判所が後見人を選任し、後見人が本人に代わって、預金を下ろしたり、財産を処分できるようにしているわけです。
では、後見人制度があるのに、なぜ資産の凍結が問題になるのでしょうか。
後見人を選任すれば、凍結した資産も融解してしまうではないかと思いますよね。
そこが、今回のメインテーマです。
理由1 後見人制度を利用しないことを選択をしているから
後見人制度自体は、よく活用されている制度であり、私自身も後見人申立の依頼を度々受けています。
よく依頼に来られるのは、両親が認知症等になられた方です。
ご依頼者様に説明しているのは、以下のことです。
1 あなたが後見人になれないかもしれません。
2 後見人になると、後見事務(裁判所への報告等)を行わなければなりません。
3 後見人になっても、財産の処分には、制限があります。
この3つを聞いて、後見人選任をあきらめる方も多くいらっしゃいます。
なぜなら、現在、後見人が付かなくても、何とかできているからです。
良いか悪いかは別問題として、両親の名義でも預金はATMで下ろせます。
施設も子供さんが入所手続きを行えば入れます。
どうしても本人にしかできないと言われるものは、とりあえず諦めて、言葉は悪いですが、相続した後にすればいいのです。
そうして、凍結資産が生まれることになります。
理由2 後見人を選任しても財産処分は制限を受けるから
逆に、それらのリスクを覚悟して、後見人の選任手続きをしたとします。
ですが、前述の「 3 後見人になっても、財産の処分には、制限があります。」
どのような制限があるかというと、基本的に財産の処分は、必要最低限度とされています。
以前ご相談いただいた方で、被後見人の父の財産で家族が集まれる家を建てたい、これは以前に父が建てると言っていたものだ、兄弟は全員賛成しているという話がありました。
このような財産の使い方は、後見人は、できません。
また、株の購入や投資信託の購入等投機的な資産を購入する等もできません。
あくまで、後見人は、財産を守ることが職務となるからです。
また、同様の理由で被後見人の財産である賃貸物件を売却し、その売却代金で新たに賃貸物件を購入すると言ったことも難しいです。
つまり、後見人になっても、生活に必要な財産処分以外は、基本的に許されず、資産凍結とまではいかなくても、動かすのが非常に難しくなるのは事実です。
以上が、 後見人制度があっても、財産が凍結する理由になります。
資産の凍結は、国の経済としてマイナスであるという視点から語られていますが、現実は、子供世代にとって、空き家を抱えることになったり、事業の承継がうまくいかなくなったり、多くの問題を生じています。
高齢化社会は、現実です。
自分自身も高齢まで生きること、子供世代の方は、両親が高齢まで生きることを念頭において、資産凍結にならないよう、対策をとっていく必要があります。
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