2025/04/07
相続
長年放置された相続、連絡困難な相続人との粘り強い交渉で円満解決へ
ご相談者: A様 (被相続人のお子様) 被相続人: A様の父 他の相続人: B様 (A様の兄弟)
ご相談の背景
A様より、「父が亡くなってから長年、相続手続きが手付かずのままになっている」とのご相談を受けました。 もう一人の相続人であるご兄弟のB様とは長年疎遠であり、現在の住所や連絡先も分からない状況でした。
A様は、ご両親の晩年のお世話から、お亡くなりになった後のお墓の管理まで、長年にわたりご家族のために尽くしてこられました。一方、B様はご家族とは距離を置き、交流がない状態が続いていました。
A様は、「Bは金銭に執着する面があるので、遺産分割協議を始めると高額な金額を要求してくるだろう」と考え、これまで手続きを躊躇されていました。しかし、ご自身の年齢も考え、「この問題を自分の子供たちの代にまで持ち越したくない」との強い思いから、今回、意を決して遺産分割を進めることにされました。
解決への道のり
- 相続人調査: まず、戸籍調査を行い、B様の現在の住所を特定しました。
- 交渉開始: B様宛に、遺産分割協議の開始を求めるお手紙を送付しました。
- 相手方の主張: B様からは、「不動産は最も高い査定額で評価し、その他の財産も正確に評価した上で、法定相続分に相当する現金を支払ってほしい」との返答がありました。
- 協議と提案: A様と協議の結果、B様の要求にそのまま応じることは、これまでの経緯を考えると心情的に難しいとのことでした。そこで、A様が B様への代償金として支払える現実的な金額を提示しましたが、B様は納得されませんでした。次に、現金に加え遺産に含まれる不動産の一部をB様に相続していただく案も提案しましたが、これも合意には至りませんでした。
- 交渉の壁と打開策: 交渉は一時難航しました。そこで、A様に、これまでのご両親との生活、ご両親亡き後の財産の維持管理や法要を続けてこられたご事情などを、心のこもったお手紙として書いていただきました。そのお手紙と共に、最後の提案として、遺産の大部分(不動産の多く)をB様に相続していただくという、A様にとっては大きな譲歩となる分割案を提示しました。
- 予期せぬ結末: すると、B様から驚くべき返信がありました。「遺産は一切受け取らない。Aが全ての遺産を取得することに協力する」という内容でした。A様の長年のご苦労や想いが、最終的にB様の心を動かしたのかもしれません。
- 解決: B様のご協力により、無事に遺産分割協議が成立。A様が全ての遺産を取得する内容の遺産分割協議書を作成し、不動産の名義変更を含む全ての手続きを完了させることができました。
本事例のポイント
長年音信不通であった相続人との交渉は、精神的なご負担も大きいものです。本件では、粘り強く交渉を続けるとともに、最終的には法律論だけでなく、ご依頼者様のこれまでのご貢献や心情を伝えるアプローチが功を奏しました。相続人同士の関係性が複雑な場合でも、諦めずに適切な手順を踏むことで、円満な解決に至る可能性があります。相続問題でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。