2025/04/10
生前贈与をやめて、公正証書の遺言を作成し、円満な財産承継を実現
土地をお持ちの依頼者様からのご相談でした。その土地には子様の一人(A様)が家を建て、ご家族と住んでいらっしゃいました。依頼者様には配偶者様と、A様の他に二人のお子様がいらっしゃいます。
依頼者様は、現在A様がお住まいの土地・建物を、将来確実にA様に引き継がせたいとお考えでした。そこで、生前贈与をご検討され、当事務所にご相談に来られました。
「親の土地に子供に家を建てさせると、後々相続で揉める原因になりやすい」という話を聞き、他の相続人との間でトラブルにならないか、大変ご不安に感じていらっしゃいました。
ご依頼の目的
- A様が確実に土地を取得できるようにしたい。
- 将来、相続人間で揉め事が起こらないように、生前のうちに対策を講じたい。
当事務所からのご提案と解決
まず、依頼者様のお話を詳しく伺いました。A様ご自身は、必ずしも「すぐに名義を変えてほしい」と強く希望されているわけではないとのことでした。
そこで、A様に確実に財産を引き継がせる方法として、「生前贈与」と「遺言書の作成」という2つの選択肢があることをご説明しました。
それぞれの方法について、以下の点を詳しく解説いたしました。
- 生前贈与の場合:
- 一般的に、相続時に比べて登録免許税や不動産取得税などの費用負担が大きくなる可能性があること。
- 今回ご希望の土地・建物だけを生前贈与しても、それ以外の財産については、依頼者様がお亡くなりになった後、相続人全員での遺産分割協議が必要になること。
- 特定の相続人への生前贈与がある場合、その分を考慮した遺産分割協議(特別受益の持ち戻しなど)が必要となり、かえって話が複雑化・長期化する傾向があること。
- 遺言書を作成する場合:
- 全ての財産について、「誰にどの財産を相続させるか」を指定しておくことで、原則として遺産分割協議を行う必要がなくなること。
- 結果として、相続発生後の相続人の手続き的な負担や、精神的な負担を大きく軽減できること。
- 公正証書遺言であれば、原本が公証役場に保管され、紛失や改ざんのリスクがなく、家庭裁判所での検認手続きも不要であること。
これらのメリット・デメリット、そして概算費用の比較を分かりやすくまとめた提案書を作成し、後日、依頼者様と再度打ち合わせを行いました。
じっくりご検討いただいた結果、依頼者様は**「公正証書遺言」**を作成する方針を決定されました。
その後、依頼者様の全財産の内容やご家族構成、そしてそれぞれの財産をどのように引き継がせたいかというお気持ちを丁寧にヒアリングさせていただき、依頼者様のご意向に沿った最適な遺言内容をアドバイスいたしました。
遺言内容が固まった後、作成に必要な書類のご案内、当事務所での遺言書文案及び分かりやすい概要説明資料の作成、公証役場との事前調整(文案の確認、費用の見積もり等)を進めました。
作成当日は、当事務所の司法書士が証人として立ち会い、公証役場にて無事に公正証書遺言の作成を完了することができました。
成果
- 依頼者様の「A様に確実に土地を遺したい」というご希望を、法的に有効な公正証書遺言という形で実現できました。
- 全ての財産について承継先を指定したことで、将来の遺産分割協議が不要となり、相続人間のトラブル発生リスクを大幅に軽減できました。
- 生前に対策を講じられたことで、依頼者様の相続に関するご不安を解消することができました。
ポイント
特定の相続人に財産を確実に引き継がせたい場合、生前贈与だけでなく、遺言書の作成も有効な選択肢となります。特に、全ての財産について遺言書で指定しておけば、相続発生後の手続き負担やトラブルのリスクを大きく減らすことができます。
どのような方法がご自身の状況や希望に合っているのか、費用面も含めて専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。当事務所では、お客様のお気持ちに寄り添いながら、最適な解決策をご提案いたします。
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